若葉のころ

2021/12/06

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

毎年のことだが、大掃除をすると必ず途中で手が止まる。
10年前に書いた企画書や
女子にもらった甘酸っぱい手紙などを手に取ってしまうと
作業が中断される。

12月。
新年に向けてなにかと忙しくなる季節である。
私は365日、すべて平等の日であるべきだと思うが、
この時期の慌ただしさがどうも苦手で
息苦しさすら覚える。

一年に区切りをつける意味では悪くない。
だから、大掃除でもして、
心も部屋もリフレッシュしようぜと思うわけだ。
掃除は大嫌いでも、宝探しだと思えば
少しは気が晴れるのではないか。

大掃除をすれば、昔の写真が見つかることもある。
古い写真を見つけるといろんな感情が沸き起こり、回想がはじまる。

高校時代の写真。
あのころは純粋だった。
純度100%の笑顔で、すべてが新鮮に映った。

大学時代の写真。
この頃には、もう腐敗が始まっていた。
頭にニワトリを乗せているような髪型が精神の乱れを表しているように、
自分の居場所を守るのに必死で心の余裕なんてひとつもなかった。

社会人1年目の写真。
心を浄化するために飛んだバンジージャンプで、
20年の泥が落ちたような気もするが、
まだまだ顔に落ち着きがない。

だが、しかし、昔のほうがいい顔をしている。
若い時の写真を見て、このころはいい顔をしているな…。
そう思える人は、私を含めて現状に満足していないのではないか。

12月は一年の最後の月。
そんな単純な月ではない。
部屋から自分を見つめ直すお宝が出てくる大事な月。
ニワトリだった時代を思い出す大事な月なのである。