くわ茶割り

2022/01/31

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

最近、よく行く寿司屋に「くわ茶割り」というお酒があり、
毎回のようにそれを頼むわけだが、
こいつがどうもおかしいのである。

一口めに舌をピリッとした感覚が襲い、
ちょうど半分ぐらい飲み終えて舌が慣れる、
というよりは、舌がバカになってきて、
そのときにはもう酔っているのだ。

誤解のないように言っておくと、
くわ茶に問題があるわけではなく、
焼酎の味や濃さに
呆れるぐらいの問題があるのだ。

お酒の濃さは何度通っても
必ず一杯めよりは二杯め、二杯めよりも三杯めと、
段階的に濃くなっていくパターンにブレがない。

チェーン居酒屋やカラオケ店では、
「あれっ?これってお酒入ってる?
カルピスサワーじゃなくて
普通のカルピスのような気がするんだけど...
ねぇねぇ、これ飲んでみてよ。
絶対にお酒入ってないから」

こんな会話は日常茶飯事で、
推測設定が徐々に下がっていくような
やるせない気持ちになるわけだが、
件のお寿司屋さんだけは別。

言葉は悪いが、
殺意を感じるレベルでガソリンを注入してきて、
頼めば頼むほど嫌がらせとしか思えないほど
お酒の濃さがアップするのである。
ビル・ゲイツが飲んだら経営のノウハウを
すべて忘れてしまうぐらいの
ポテンシャルを秘めたくわ茶割り。

「俺、酒はめちゃめちゃ強いっすよ~」

そう言い張る20歳になったばかりの若僧作家に、
そのくわ茶割りを飲ませてあげたい。
酒をナメてました、すいませんと言わせたい。
そう思う今日この頃です。

てか、くわ茶って何?
大トロは死ぬほど美味いので誰か行きましょう。