ケツ合わせ

2017/03/06

作家には「ケツ合わせ」で仕事をする人が多い。
その多さたるや、他の業界では類を見ないと、
他の業界に身を置いたことのない私でも分かるほどなのである。

「ケツ」とは、業界用語で「次の予定」を意味する語だが、
「締め切り」という意味でも使われ、「ケツ合わせ」という時は、後者の意である。
つまり、「ケツ合わせ」とは締め切りに合わせてギリギリで入稿する、ということになる。
他の仕事ならば、毎回締め切りギリギリでの納品、となると、
「仕事のできない奴」というレッテルを貼られること待ったなしだ。
しかし、作家となると全く違うのである。

例えば、400字のコラムなら締め切り1時間前に始めれば、
間違いなく書き終えることができるが、
その内容を考えるのも、構成するのも、頭の中であり、その作業はPCを開く前に完了しているからだ。
作家の多くがケツ合わせになるのは、考えることに最大限時間を費やしたいからなのである。

事実、書き始めて40分ほどで完成にこぎつけたこのコラム、
考えるのに15時間ほど費やしてしまったため、締め切りは5時間ほど過ぎている。

それでは、よしなに。また来週。


作家 荒木建策