チoコ

2022/02/14

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

ハッピーバレンタイン!

年始に諸事情あって
4日間のホテル暮らしを余儀なくされた。
@渋谷

初日。
ホテルのバスルームで、
自宅と同じようにボトルをプッシュしたら、
コンディショナーで体を洗い、
ボディーソープで頭をすすぎ
シャンプーで締めるといった離れ業をやってのけた。

機能したのは最後のシャンプーだけで、
カピカピの髪を戻すのに活躍してくれたのは
小さな思い出。

ホテルでは電気をつけっぱなしにして
貧乏臭い優越感に浸るのが楽しみなのに、
今の世の中がそうはさせてくれず、
仕方ないので、
ホテル泊まりの一番の醍醐味である
朝食バイキングに突撃した。

ブレックファースト。
エレベーターでジョーカーのように
小躍りしながら指定のブースに着くと、
3人組のオカマが
ポテトサラダの入った容器をつついていた。

目をこすり、耳をすませて
もう一度たしかめたら、
やっぱりオカマだった。
不運にもその隣しか席が空いておらず、
仕方なく腰をおろすと、とにかく声がでかい。

午前7時過ぎに耳にするチoコの声は斬新で、
ウインナーを頬張ろうとした瞬間にそれだから、
私の楽しみは一瞬にして喪失である。

ああ、朝食の場はオカマ禁止とは言わないから、
せめてウインナーがある場でチoコの話しはNG。

あわよくば出禁にしてほしい。
俺はドスのきいたダミ声を横で聞きながら、
ひとつもおいしくないウインナーを口にした。
髪を触ったら、いつになくごわごわしていた。