作家の性分

2022/03/07

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

作家を生業にする人間の部屋は汚い。

これは自分が集めたサンプルからはじき出された答えで、
だからといって何がどうってわけじゃないけれど、
とにかく汚いのである。

例えば、S君。
彼なんか特にひどい。
部屋なんて狭くてオッケー、
男女二人が寝れるスペースさえあればいいのさベイベーと、
家をカプセルホテルだと思っている。

では、なぜ部屋が汚くなるのか。
だらしないだけで片付けてくれる女性がいないから
と言えばそれまでだが、理由は別にある。

正確にいうと、汚くしているのではなく、
そこから元に戻そうとしないだけ。
S君を例に挙げると、キレイにしたい気持ちはあるけど、
片付けてしまうとどこに何があるのか逆にわからないとのこと。

財布やタバコを本の裏やわずかな隙間から見つけ出す嗅覚...
それはまさに研ぎ澄まされたハンターそのもの。
勘が錆びぬよう日々精進するために部屋を汚しているらしい。
天晴れだ。

夢の中から目覚めて朝シャワーを浴びたら
昨日のことなんてすっかり忘れている。
うちの鍵はどこですか。
財布とタバコどこですか。
鼻歌まじりに見つけにくいものをあっさり見つけ出すのである。

でも、たまには見つけられないものもあるようで、
それは「日常」に関係ないもの。
この前は実印を探しだすのに数時間かかって大変だったとのこと。

いつもの勘が働かず、
それが原因で会議に間に合わず、
番組を首になったらしい。
部屋が汚いせいで仕事失ってんじゃん。

マジで片付けなきゃヤバイよ。
布団の下から未開封のカニかまが出てきたのを見て
心底そう思いました。

明日は我が身。