最強のビジネス

2022/05/09

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

クレームゲームには
ビジネスの基本が詰まっている。

子どもから大人まで楽しめて、
成功時には報酬がもらえ、
なおかつ気持ち良さまで残る。
場合によっては目当ての景品に
2000円くらい要することもあるけれど、
レディの喜ぶ顔が見られるなら
プライスレス。

こと気持ち良さに関しては
他のサービスの群を抜いている。
例えば1プレイ100円のうまい棒のクレーン。
上手くいっても取れるのはせいぜい3本である。
金額にすれば70円の損なのに、
思わずガッツポーズをしてしまうのは
景品の価値より気持ち良さが上回っているから。
損をしているのに喜んで帰れる。
これこそ究極のサービスではないか。

景品で思い出したが、
その昔、エロビデオが絶妙の角度に置かれ、
アームの強度もこれまた絶妙、
頑張れば手が届きそうなアイテムを前にして、
エロ学生仲間と作戦会議までして
戦いを挑んだことがある。
今でも、仲間と集まれば
そのときの話題になるほど思い出深い。
まさに、プライスレス。

仮に景品が高価すぎたらどうだろう。
例えば100万円相当のダイアモンド。
オーナーはアームの強度を
豆腐すら揺らせないように調整し、
1プレイ1000円に設定するに違いない。
最悪の事態を想定して
景品を落とす穴の周囲に
強風を吹かせることも考える。

その結果、誰も寄りつかなくなるのだ。
需要と供給のバランスを保てないから、
お互い楽しくもなんともない。

その絶妙なバランスを保ち続け、
昭和の時代から
(1965年には存在していたらしい)
老若男女に愛されるクレーンゲーム。
今はオンラインでも楽しめる時代だ。

今度担当する番組でオンラインの
クレーンゲームを取り上げるので
試しにやってみたらハマった。
もうじき大量の景品が届くのだが、
本当に欲しいものが
ひとつでもあっただろうか。

クレーンゲームに
ビジネスの基本を見た。