バーチャル夏

2022/08/29

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

一年ずつ着実に、
夏の暑さへの耐性が低くなっているように思う。
昔は冬よりも
何か起こりそうな夏の方が好きだったが、
今は秋一択。

吸い込む空気に哀愁が少し混じっているような、
頬に触れる風が少し冷んやりするような、
あの雰囲気に魅力を感じる。

最近の夏は暑すぎる。
寝不足のまま外に出ると、
そのまま帰らぬ人になりかねないほどの日差しは
まさに死の光線、デスビームである。
今年こそヤバいんじゃないかと思いながらも
なんとか乗り切り、やっとこさ蝉を送り出す。

夏の魅力は、甲子園を駆ける純粋な高校球児と
キンキンに冷えたドリンクくらい。
関東のビーチは基本ドブ色なので、
海水浴も悪。

夏らしいことなんてひとつも体験せぬまま
また、ひと夏が過ぎる...。
そう思っていたわけだが、今年は違った。
田舎の夏が忘れていた何かを思い出させてくれた。

昨年、話題となったSwitchのソフト
『クレヨンしんちゃん オラと博士の夏休み~』。
せめてゲームの中だけでも夏を感じたいと思って
購入したのだが、これが当たり。
ラジオ体操、探検、虫取り、魚釣り...。
外に出ずとも理想の夏休みを疑似体験できる。

田舎育ちの自分にとっては、
とても懐かしいあの頃の夏を
再び体験することができるエモいゲーム。
蚊取り線香でも焚きながらプレイすれば、
暑さだけを取り払った完璧な夏だ。

不完全燃焼の夏をすごした方には、
是非オススメしたいソフト。
日本人の心に沁みついた田舎の夏の原風景が
都会生まれの方にも懐かしさを
感じさせてくれることだろう。

もう夏は、バーチャルでいかが?