ホコリ

2022/09/26

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

どういう風の吹き回しか
自分でも分からないのだが、
部屋のレイアウトを変えてみようと思い立ち、
善は急げとやってみることにした。

いざ取り掛かると、
模様替えとは「ホコリとの戦い」であることに気付く。
何を動かしても、どこから来たのか分からぬ
正体不明のホコリが多かれ少なかれ付いてくるのである。

調べてみるとホコリは、
布団や衣類、ぬいぐるみ、絨毯、
ティッシュ、新聞、雑誌などから剥がれ落ちた
繊維の屑はもちろん、
体に付着した排気ガスや花粉なども原因とのこと。
無類のぬいぐるみ好きである私は、
ホコリと一生の付き合いになりそうだ。

ということで、ホコリを除去するために
効率の良い掃除グッズを検索してみることに。
そこで多く目にしたのが「サッサ」最強との声。
水を使わず、拭くだけで掃除できるワンタッチ雑巾。
表裏しっかり使えてホコリと人々の心を掴んで離さない
昭和45年の発売から愛されるロングセラーである。
15枚も入ってワンコインでおつりがくるという
高コスパも魅力。

早速仕入れて使ってみると、
ホコリ同様、私の心も完全に掴まれた。
「サッサ」の名に恥じぬ使い心地と利便性。
「名は体を表す」というのは、まさにこのことである。

名は体を表す、といえば...
「サッサ」然り、
森羅万象ほとんどのモノは、
先に現物や現象が存在し、
「名付け」は、それに対して成されるものだが、
唯一、その法則に即していないのが人間の名前、
特に名字であるように思う。

「OO」という名字が先にあり、
その名を冠する人間が生まれてくる。
その結果「名は体を表す」と真逆の現象が起きるのだ。
「荒木」などという私のように有り触れた名の場合、
その限りではないが、
特殊な名字を持って生まれた場合、
人は、その名に相応しい生き方をしようと
名に寄せていく傾向にあるのだ。
体が名を表す、と言い換えることもできるだろう。

実際に、私が出会った中で、
最も珍しい名字は、表参道の美容師、
「一番合戦(いちばんがっせん)」さん。
全国で30人しかいない絶滅危惧名字だが
彼女はやはり「一番合戦然」としていて、
トップスタイリストになることを夢見ていた。
二番合戦だったらトップは目指さなかっただろう。

二番目に珍しいのは、大学のゼミで一緒だった同級生
「三百刈(さんびゃくがり)」くんで、全国に50人の名字。
小学生の頃、遠足に300円オーバーのおやつを持ってくる
児童を告発することを生きがいにしていたらしい。
二百刈だったら、生きがいを見失っていたことだろう。

三百、といえば...
こちらのコラムは今回で300回目。
(随分遠回りしましたが、言いたかったのはコレ↑)

「300回続くMPPコラム」
その名に恥じぬよう、書き続けていく所存。

読者の皆様、関係者の皆様に感謝を込めて。