北極から生還した2日間の記録

2022/10/10

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

(土曜日)
休日の私の心には「寝る」「遊ぶ」そして「諦める」と、
お陰さまでボタンが3つもあるのですが、
今まさに、プルプルと震える右の人差し指が、
最も冴えないボタンを押さんとしています。

昼食と呼ぶには遅すぎるし夕食と呼ぶには早すぎる、
だらしない時間に食べたのは蒙古タンメン中本の
「北極ラーメン」(辛9)でした。

以前は週1で通っていたのですが、
コロナ禍もあって実に2年ぶりの中本。
「北極ラーメン」は
デフォルトメニューの中で最も辛いとされるのですが、
毎回食べきっていたので、
今回も難なく、美味しく食べられるだろうと
一口目を口に含んだ瞬間、
家族の顔と小学校の校舎と今までの失敗が
走馬灯のように駆け巡りました。

脳が溶けそうなほど辛いのです。
舌の上でモトリー・クルーがライブを
繰り広げているかのようなな辛さと言えば伝わるでしょうか。
アフリカ生まれの暴れ馬が
駆けずり回るかのような辛さと言えば伝わるでしょうか。
伝わらないでしょうか。

ともあれ、男たるもの辛みなんぞに負けてなるものかと、
頑張ってみたのですが、
完食を目前にして、意識が遠のいていくのを感じ、
志半ばで店を出ることにしました。

店を出たところにちょうど良いベンチがあったので、
倒れるように座り込みスマホを開くと、
視界がどんどん狭まっていき
目は開いているのに画面が見えないという
過去に経験したことのない状態に。

回復するまでにどれだけの時を要したのか
全く記憶にないので、
もしかしたら座ったまま気を失ったのかも知れません。
その後、なんとか回復し、
家にたどり着くことはでき
(ここで、諦めボタンを押下)

(日曜日)
昨日はあまりの体調不良に
諦めるボタンを押してしまいました。
今日の締め切りを落とすと
仕事が2本吹き飛ぶことを考えると、
どのボタンを押すこともできません。
まさに自業自得。
身から出た錆。
自縄自縛。

たまに海外のニュースなどで
辛い唐辛子を食べて亡くなったという話を聞きますが、
もう他人事ではなくなりました。
皆様も久しぶりに辛いものを食べるときは、
実力とその日の体調を照らし合わせた上で
お楽しみください。