一億総せっかち

2023/01/23

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

現代人が1日に得る情報量は、
江戸時代の人の1年分らしい。
これでも度肝を抜かれる「嘘やん」案件なのだが、
平安時代の人に換算すると一生分らしい。 
嘘やん!!

スマホやテレビはもちろん、
インフラなどという概念すらなく、
「社会的基盤施設」が皆無とも言える時代だから、
そりゃそうかとも思えるが、
現代人は、どれだけ情報欲しがっているのか、
必要としているのか、
と恐ろしくもなる。

情報の有り無しによって、
生活レベルすら変わってくる時代なので、
仕方がないのかも知れないし、
私自身、より多くの情報を得ようと
日々忙しない生活を送っている自覚はある。

それでいて、
今、ブームなのがタイムパフォーマンスという言葉。
いわゆる「タイパ」である。
「ファスト映画」だったり、
YouTubeの「ショート」だったり、
今、求められているのは、
短時間でサクッとみられるコンテンツ。
多くの人が
「短い時間で内容だけ分かればいい」という思考に
陥っている。

陥っていると表現したのは、
もちろん、それが悪いことだという意味を
含ませたいからである。
自分自身にタイパを求めすぎている傾向と
それに伴う弊害が起きているから。

タイパを求めすぎると、
まず、集中力がもたなくなる。
短いコンテンツを観続けているせいで、
映画ほど長尺の上映映画だと
内容が全く入ってこなくなったし、
小説やマンガですら、
続けて読むのは10ページが限界。

先日、鑑賞した演劇に関しては、
開始5分くらいで
これをあと何分観なければいけないのかと
終幕の時間が気になり、
そわそわし始めたほど。

最たる弊害が、人との会話である。
長々と話す人の話を聞くのが苦痛で仕方なくなる。
「その話、もういいから早く結論を言ってくれ」
と思うことが以前より多くなっている。
「早くオチを言って」と急かしたこと数知れず。
良くない。
これは良くない。
のほほんとした性格と言われていた私がこの有様。

国民総せっかち時代の到来か。
時代に合わせて、
忙しなく生きるのか、
逆らって悠々自適に生きるのか。
今、最も求められている選択だと思う。

私は、平安時代を生きたいとは思わないが、
大正くらいがちょうど良い気がする。