涙酒、その黄金比

2023/01/30

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

12月に京都にて半年間の禁酒を解き、
やはり酒はいいものだなぁと、
その後、正月を言い訳に長崎の実家でしこたま飲み、
東京に戻っても一人酒を楽しんでいる。
一日にハイボールを一杯だけ。

氷を入れてウィスキーが1、ソーダが3の割合。
炭酸が逃げないようにかき混ぜるのは縦に一回のみ。
これは小雪が教えてくれたハイボールの作り方だが、
「BAR ARAKI」ではウィスキー1のソーダも1と、
かなり情熱的な配分でお客さまをお出迎え。

残念なことに、これまで来客はゼロだから
仕方なく自らが実験台となっているのだが、
やっぱり配分に間違いはない。
素面で聴くジョン・レノンのイマジンと
飲み終えたあとに聴くイマジンとでは涙の量が違う。

誰かと飲む酒は笑い酒。
一人で飲む酒は涙酒にしたいから
そういう点では、やはりこの配分は成功である。
仮にウィスキーの割合を減らした
小雪バージョンにすると半端にテンションが上がって、
変なTweetをするクセが発動してしまう。
逆にウィスキーを増やすと
「BAR GEROKI」がオープンとなり、
次の日に泣くことになるからやめておこう。

1:1は涙を流す黄金比である。
騒ぎたければ1:3、逝きたければ2:1。
選択は個人の自由だが私は断固として黄金比を貫き通す。

先日もそうだ。
最初のうちはサッカーのYouTube映像を
ゆっくり飲みながら観ていた。
しかし、三苫選手の世界での活躍を見ていたら
そのプレーの積極性にテンションが上がり
感情移入して涙がこぼれた。
勝利を掴もうと海外で孤軍奮闘している。
こんなのを見させられては、泣かないほうがおかしい。

そのあとは、やはりイマジンを聴いてさらに泣き、
『コーヒーが冷めないうちに』の
松重豊の芝居でまた泣いた。
この速効性には配分が影響しているのは間違いないが、
極度のドライアイでちょっと瞬きを忘れると
涙がこぼれるように改悪された人体的な仕様のせいか、
もしくは、量も関係しているのではないかとも思う。
たぶん、ジョッキで飲むのはよくない。

今度の休みにグラスを買いに行こう。