WBCの記憶

2023/03/06

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

今、スポーツに少しでも関心のある人のほとんどが
WBCことワールド・ベースボール・クラシックに
注目していることだろう。

もちろん自分もその一人で、
今回も、毎試合欠かさず観戦する所存だが、
オリンピック同様、過去回の視聴記憶がない。
前回の記憶すら一ミリも残っていないのである。

今までのWBCで残っている記憶はふたつ。
まずは第1回大会。
「山奥にひっそりと暮らしているが、
森の動物全員から嫌われているおじさん」という
ニックネームがしっくりくるアメリカ人審判、
ボブ・デービッドソン氏である。

彼のジャッジはもはや誤審だとか
えこ贔屓といったレベルではなかった。
たぶん反抗期が遅いだけなのだったのだろう。
こればっかりは仕方ない。
誰だって経験するのだから皆さん、
もし、テレビの「過去大会振り返り特集」などで
記憶がリフレインしたとしても
彼を許してやってください。

きっと、彼も家へ帰れば家族がいて、
妻や子供からすれば優しくて頼もしいパパなはずだ。
だけど、クソジジイ...あのタッチアップ、
ありゃ誰が見てもセーフだ。
今度ミスを犯したら「たっちゃん」ですら
マジ切れすると思うので、
審判の皆様、特に米国人審判は、
くれぐれも同じミスのないようお願いいたします。

さて、もうひとつは、
国際大会にはつきものの愛国心。
今までの日本チームには、
何故だか気迫が足りないように感じていた。
その「何か」には、実は気付いていて、
それは...メジャーリーガーの欠場問題。

ヒデキ・マツイは、王監督の誘いを断るなど
結局一度も出ることがなかったため
私の中では非国民扱い。
大谷もダルビッシュも
過去の大会には、欠場した経験がある。
それが、今回、ふたり揃って出場とあれば、
これは、真の日本代表。
期待を膨らませずにはいられない。
あるぞ、優勝。

にしても、韓国代表はすごい。
他チームへのライバル意識は鬼気迫るものがある。
第1回大会予選で日本に勝った際、
東京ドームの神聖なマウンドに
国旗を突き刺した奇行には、
素晴らしい愛国心を感じた。

今回もスポーツの世界に
政治という新風を吹かせてくれるのだろうか。
日本は韓国をライバル視してはおらず、
公共の場で騒ぎ散らす他人の子に対して
どんな遺伝子を受け継いだらこうなるの?
という気持ちになる感覚に近く、
とても温かい慈悲の目で見ているのに。
バグを憎んで人を憎まず。

今回は、何もしてくれるな。
私はWBCを楽しみたいだけなのだ。