英会話の彼女

2017/04/17

近所の本屋の入り口で、笑顔を振りまきながら英会話の教材をしきりに勧める女性がいた。
殺し屋でも敬遠するようなサングラスをかけていたせいで、
反社会勢力の人間にカテゴライズされたのだろうか。
少なくとも学生、おじいさん、おじさん、私と続けて店を出た中で、
私だけ声を掛けられなかった。
ショックを押し殺しながら買い物を済ませ、数分後、再び本屋の前を通ると、
英会話の彼女は白人男性を捉まえていた。
女「今の時代、きちんとした英語がしゃべれないと」
外「ソノトヲリデスネ」
英会話の教材を売り込む側からすると、
殺し屋の価値は、既に英語をしゃべれることが明白な白人男性をも下回る。
そうした悲しい現実はさておき、この場で最も「いい人」は誰なのかを考えて欲しい。
外国人に、わざわざ英会話の必要性を説く女性か。
「オレをどこの国の人間だと思ってるんだ」とは言わずに、説明に耳を傾ける白人男性か。
それとも、サングラスをポケットにそっとしまった私か。
皆さんは、どう思うだろうか。

英会話レベル小学生並作家
荒木建策