リベンジ丼

2023/04/10

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

私は今、うつろな目でこれを書いているのだが、
それは、最近始めた仮想通貨投資で、
引くに引けなくなって、
ままよと突っ込んだ結果が散々だったからと、
勝手に決め付けるのは勘弁して頂きたいのである。

確かに、一瞬にして数十万の負けを食らうという
地獄を味わったが、
それが理由ではない。
景気づけにと食したカツ丼のご飯が
柔らかかったが為なのである。

カツ丼とは何たるか...。
丼と名が付くには
まず、当たり前だが丼に入っていなければならない。
カツや鰻や親子など、おかずとなるものの下に
ご飯が敷き詰められていなければならないし、
そのご飯は気持ち固くなくてはならない。
カツを煮た汁が染みることを考えれば、
カツ丼の場合は、
特に固めに炊くことを求められるというのに、
さっき食べたカツ丼のご飯は
もう、おじやかといったほどに柔らかだった。
お汁が染みた部分は、もはやお粥だった。

ご飯が柔らかかったぐらいで...。
と、肩をすくめている方は、
今回、私が食べた丼の意味と役割を理解していない。

勝った後に食するカツ丼ではない。
負けた後に食らうカツ丼なのである。
ジューシーなカツと固めのご飯、
両者のマリアージュによって生まれる奇跡の食感で、
乾ききった胃袋と心を優しく満たし、
次の勝ちを決意するために食すカツ丼。
いわば、「リベンジ丼」なのである。
懐具合は、もりそばがふさわしいにも関わらず、
決死の思いで頼んだというのに、
おかゆ食ってどうすんだって話なわけである。
病気じゃあるまいし。

昨年まとめ買いした新米が切れて古米に切り替わり、
水分量を間違えたのだろうか。
あるいは、米を炊いたのが右も左もわからぬ
新米だったのだろうか。

いずれにしても、
一食損した気分にさせられた原因は新米であり、
これは、投資新米の頃を思い出せという
啓示だとも考えたのだが、
投資3ヶ月目の私もまだまだ新米。
仕方ない、勉強代と割り切るか。
はぁ...。

依然として、うつろな目の私なのでした。

※後日
末筆ですが、
失ったお金はちょっとプラスになって戻ってきました。
これを機に仮想通貨投資からは引退しましたので、
皆様、ご安心ください。