若い頃のキムタクに似ていると言われたことがあります

2023/05/29

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

最近は方々で「有能な人間ほど空気を読まない」と聞くが、
それを鵜呑みにした無能人間が空気を読まなくなり、
とんでもないモンスターが次々と生まれている現実に
そろそろ気付かなければならないのである。

とかく、言葉には気を付けなければ、
日本では生き辛い。
なにか発言する前に、
落ち着いて考えれば「事故」は起こらないわけで...。

この仕事をしていると、
たまに代理店や制作会社の方から写真を要求されることがある。
いわゆる宣材写真というやつだ。

先日、とある代理店から、
宣材を送ってほしいと頼まれ、
スマホに保存されたフォルダの中から2枚ほど選んだ。
ひとつは真面目な顔でビシッと決めている写真。
もうひとつはコスプレに変顔をしたハズレバージョン。
何に使われるかわからないから、
とりあえず2パターン送っておけば問題ないだろう。

恥ずかしさを誤魔化すために
「かっこいい写真とかっこわるい写真を送りました(笑)
どちらを使うかは、OOさんにお任せします」という
一文を添えて送ったわけだが、
私の添付ミスでかっこいい写真の方だけを
送ってしまっていた。

これは寒い。
軽くボケたのに、
かっこいい写真だけを自信満々で送りつける
ナルシストになってしまった。
翌日、顔を真っ赤にしてもう一枚のほうを送ろうとしたら、
先方から催促のメールが届いていた。

「お忙しい中、写真をお送りいただきありがとうございます」

うわ、普通ぅ!
もっとフランクに接してくれないと、
恥ずかしさが倍増するじゃないか。
だが、このあと、
すべてを吹き飛ばす爆弾が仕掛けられていた。

「しかし、一枚しか送られていないようなので、
改めましてかっこいいほうの写真を頂戴したく思います」

かっこいいほうの写真を頂戴したく思います。
かっこいいほうの写真を頂戴したく思います。
かっこいいほうの写真を頂戴したく思います...。

Oろしたろか!?
送ったのはかっこいい写真の方だよ!

恥ずかしさが3倍に膨らみ、
もう、どうしていいかわからなくなって、
開き直りで
「若い頃のキムタクに似てると言われたことがあります」
という一文を添えて、同じ写真を送りつけた。

空気を読めてないのは
私のほうであるような気もするが、
相手の見た目に関して空気を読むのは、
人間であるなら誰にとっても必要な技能ではないか。

昔、お世話になった制作会社の社長が飲み会の席で
秋元康先生に
『川の流れのように』について
「こんなデブが作詞したとは思えないね」と発言して
ブチギレされていたのを思い出した。