修羅場@長崎①

2023/06/26

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

正直...「あぁ、懐かしいなぁ」だった。
「この感じ、久々に味わったなぁ」と思った。

長崎にいたときのことだ。
5月29日の私の誕生日に、
佐世保南高校時代の陸上部の先輩から
SNSを通じて「おめでとう」と連絡があった。

彼女は、たしか長崎在住。
もし会えるタイミングがあったら食事でもどうですか?
とお誘いしたところ、数日後に会うことに。

彼女は、佐世保から長崎に移り住んでから久しく、
知っているお店も多いとのことで、
お任せしたところ、
オススメの4店から、
「どれがいい?」と選ばせてくれた。

そして、当日。
私が選択した長崎では高級な焼き鳥店。
あの頃と何も変わらぬ先輩が登場。
ミス長崎だかなんだかに選ばれたというし、
まあ、見る人が見れば超絶綺麗な女性なのだろうが、
私からしたら、懐かしい高校の先輩だ。
会ってすぐに以前と同じ関係。
昔話に花が咲く。

...宴もたけなわ。
場が温まってきたところで、
今更ではあるが、聞きにくかったことを聞いてみた。

「ところで、誰と結婚したの?」
「えっ?」

噂にはなっていた。
かなり年上の方と結婚したらしいと。
彼女も隠していたわけではなく、
単にストレートに聞く人間がいなかっただけなのだろう。
「20歳年上なんだけど、
私のことをずっと好きだと言ってくれていた方。
こんなに自分のことを好きになってくれる人は
今後現れないだろうと思って結婚した」と話してくれた。

「へー...(苦笑)」
「3年前に離婚したんだけどね」

「なんて!?」
「...だからー、」

私は、たぶん、その瞬間爆笑していた。
「OOさんバツイチなの!?ウケる!」と
二の矢では店中に響く声量でイジっていたし、
若い女性の店員さんも、普通に笑っていた。

「マジでバカにしないでくれる?」

そんなやりとりの直後である。
お店の入り口を荒々しく開ける音。
途端、齢60くらいのおじさんが、
カメラをパシャパシャいわせながら我々に迫り、
写真を撮っている。撮りまくっている。

酒も入っていたせいか、
状況が把握できず、
OOさんの上司が偶然見つけて、
いたずらを仕掛けてきたのかと思い、
その男が目の前にくるまで、
私はニヤニヤと苦笑いの間くらいの顔をしていた。
「長崎のジジイ、キチイなー」と思いながら。
                      ②へ続く