起きたら裸の人が隣に寝ているアレ

2023/08/14

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

ぼくらの7日間戦争ならぬ3日間戦争、
もしくはスタンド・バイ・ミーの世界でした。

9月の引っ越しを前に
要らない家電を処分したことによって
客人を招けるスペースが確保できたので、
大学の友人を家に呼んだ。
石油を掘る会社で稼いでいる友人は、
後部座席に泥まみれの野球道具を積んだ
汚いベンツでうちにやってきた。

たしか、あれは21時くらい。
まずは、お洒落な居酒屋に入って一杯やるも、
冷房直下の座席に身の危険を感じたので早々に退店。
土曜日の夜ということもあって元気な若者多数。
店内が有楽町のガード下並みに五月蝿かったのも原因。
友人曰く、この街の若者全員がこの店に来てるとのこと。
...そんなわけねえだろ。

次に足を運んだのは、
落ち着いた店構えの小料理屋で、
暖簾をくぐる前から期待度マックス。
おいしい料理に舌鼓をうちながら、
お互いに見合う結婚相手について
熱く語ろうと思ったのだが、
入ったら汗っかきのおばちゃんが切り盛りしていて、
期待を裏切られた反動もあってか、
友人のテンションは奈落の底。
呼んだ手前、責任を感じた。
しかも、おばちゃんが唐突に
「ガソリン代が高い」と言い始め、
ガソリン代が高くなればなるほど儲かる会社に
勤める友人の顔が徐々におかしくなっていく。
その直後、
「で、お兄さんたちはなんの仕事してるの?」だもの。
友人があわあわしている中、
「あ、ごめんなさい。働いてない人もいるわよね」
とニート判定されたところで撤退。

「...次、どうする?」
土曜日の夜だというのに、
人っ子一人見当たらなかったのが、
ひときわネオンを際立たせたのでしょう。
フィリピンの国旗が描かれた看板を見つけ、
日本に見切りをつけた石油王が吸い込まれていく。
私は、初めてのフィリピンに足を踏み入れることに。

「おー、異文化」

そう思いながら感動する私をよそに
友人は家に帰ってきたかのようなテンション。
入店から間もなくして
カラオケを始めた友人はよほど楽しかったのか、
ステージ上で寝転がり、ワケのわからぬダンスを披露。
その様子を見たフィリピーナは
「おぉ!シュリンプ!」と大はしゃぎ。

なんだこの空間は...。
と思いながら私は久しぶりに酔っていた。
そこから先はテキーラのせいで記憶がすっぽり。
そして、目が覚めたら自宅で、
隣に裸の人が寝ていた。
他人を家に連れ込み、
気づけば裸にしていたなんて、
私が遊び人だと思われるので、
他言は勘弁して欲しい。

しばらく昨日のことを思い出そうとしたが叶わず、
隣で寝ていたエビを起こしたら、
なぜかサンドウィッチを作ってくれた。

友よ...スタンド・バイ・ミー。