インド人の距離感

2023/10/23

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

10月に移り住んだここ、
駒沢には美味しいカレー屋さんが多いらしい。
ということで、
友人ふたりを誘って
うちに最も近い噂のカレー屋さんに行ってみたのだが、
そのカレー屋さんはナンは美味しいけれど、
店員さんにはナンがあった。

こちらが会話していたり、
食事しているのに一切構わず、
一方的に話しかけてくるのだ。

「この店は初めてデスカ?」とか、
「近くで仕事しているのデスカ?」とか。

インド人の友だちがいないので、
基準というのがわからないのだが、
インド人ってのはここまでフレンドリーなのか?
...不躾なのか?

日本で言えばのれんをくぐって入る
居酒屋でお銚子を7本空けた時、
女将が「お兄さん、毎日来てるね」というくらいのジャブを
そのインド人は、いきなり放ってくるのである。
この距離感にクラクラしていたら、
インド人がまた聞いてきた。

「カレーおいしいデスカ?」
それに対して連れの友人が放ったカウンター。
こいつにシビれた。

「ああ。旨いよ」

え!?タメ口!??

店員に対してタメ口というのもハードルが高いのに、
相手はインド人だ。
そうとうな手練れである。

まぁ、質問に対する答えも一択なので、
(美味しくないとは言えない)
インド人的には日本語の勉強を
兼ねていたのかも知れないのだが、
この返しには驚いた。

私みたいに「はい。美味しいです」
などと言っている人間にはきっと
彼のようなインド人と仲良くなることなんて
不可能なのではないか?

もしかすると、母国に帰った時に
「日本人は外国人との間に壁を作りすぎる」
なんて愚痴をこぼすかも知れません。
⚫︎⚫︎くんはすげーなぁ、なんて思っていたところ、
同行していたもうひとりの友人が...

「店員に対してタメ口なんて、俺はできないなぁ!!」

とブチギレ。
うん、そうとも言える。
距離が縮まるかもしれませんが、
失礼といえば失礼だ。

「付かず離れずが一番」というのは、
米寿を迎えたうちの祖母の言葉だが、
距離感を計るメジャーは、
人それぞれなんだなぁと実感した出来事だった。