ドレスコード

2023/11/06

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

私たち放送作家は自由業なので、
基本的に服装もフリーなのだが、
キー局で行われる会議だけは別。
局のプロデューサーに迷惑をかけぬよう
場に相応しい服装で出向くことが求められる。

私が初めて日本テレビに連れて行ってもらった時は
「ジャケット着用が望ましい」と先輩に言われ、
生まれて初めて
ショップで見立ててもらったのに、
先輩がデニムジャケットを着てきた。
デニムジャケットって「ジャケット」なのか?
と、面食らったのを覚えている。

先輩は案の定、会議でいじられ、
プロデューサーからは
「お前は日テレ出禁」と言われていたし、
数年後、ネルシャツでタレントの結婚式に出席し、
そのタレントから絶縁を言い渡されることとなる。
ある意味「伝説」だが、
そんなことで伝説になっても嬉しくはないし、
業界の悪いノリにより、
自分が結婚式を執り行う際に
かなりの人数がネルシャツで現れることになる。

それぐらい常識がない放送作家たちを
粛清しようとしたのかは定かではないが、
「会議に相応しい服装」というテーマで
話し合いが持たれたことがある。
10年以上前のことなので細かい箇所は
記憶違いがあるかも知れないが、
以下のようなガイドラインが決まった。

襟のある服を着用(アロハシャツは不可)
ジャージ不可。
短パン不可。
サンダル不可。

一般の会社で働いている方、すみません。
「小学生?」というレベルの話だが、
「沖縄を扱う旅番組の場合は、
アロハシャツ着用が正装ではないか」と
小一時間真剣に話し合ってしまうなど、
私たちはそういったレベルに達していないので
察していただきたい。

ちなみにコンプライアンス講習など
スーツの方がほとんどの会議でも、
制作会社で開かれるものであれば、
ジャージでオッケー。だと思っている。
局に出向く際に限り、
極力ドレスコードというのを理解しようと
務めているのである。
局の受付嬢が総じて美人であるというのも
一因であるが、
カチッとしたジャケットを
着こなしてみたい、と我々みたいな者でも
常々思っているのだ。
なので、
多少間違えても許して欲しい。

なぜ、こんな話を書いたかというと、
ジャージ素材のジャケットを新しく買い、
これはセーフなのか、
アウトなのか、
確かめるために、
着ていこうと考えてしまっているからである。