十二月の駒沢パークブルース

2023/12/04

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

12月である。
もう、12月である。
私は今、駒沢公園のベンチでこれを書いているが、
それは、今回の内容とは全く関係ない話である。

12月といえば大掃除。
あるあるだと思うが、
大掃除をすると必ず途中で手が止まる。
私の場合、10年前に書いた番組の台本、
甘酸っぱい異性からの手紙などを手に取ってしまうと、
作業が中断される。

12月は、
新年に向けてなにかと忙しくなる季節である。
365日すべて平等であるべきだと思うが、
私は、この時期の慌ただしさがどうも苦手で、
息苦しさすら覚える。
テレビ業界は、
この時期忙しさの絶頂で、
年末特番やら正月特番やら
二束三文で馬車馬のように働かさせるからだ。

12月。
一年に区切りをつける意味では悪くない。
だから、大掃除でもして、
心も部屋もリフレッシュしようぜと思うわけだ。
掃除は大嫌いでも、
宝さがしだと思えば少しは気が晴れる。

大掃除をすれば、
昭和の時代丸出しの幼稚園のころの
写真が見つかることもある。
古い写真を見つけるといろんな感情がまじり、
回想がはじまるのだ。
あの頃は純粋だった。
純度100%の笑顔で全てが新鮮に映る。

大学生のモヒカン時代の写真も見つかる。
もう、放送作家として仕事もしていて
このころには、もう腐敗が始まっていた。
頭にニワトリを乗せているような髪型が
精神の乱れを表しているように、
自分の居場所を守るのに必死で、
心の余裕なんてひとつもなかった。

そんなふしだらな心を
浄化するために飛んだバンジージャンプ。
蓄積された泥が落ちたような気もするが、
まだまだ顔に落ち着きがない。
そんな写真も一緒に出てくる。

若いころの写真を見て、
このころはいい顔をしているな...。
そう思ってしまう人は、
きっと現状に満足していないのではないか。

自分はどうなのだろう。

うーん、昔の方がちょっと
いい顔に見えるなー。

12月は一年の最後の月。
そんな単純な月ではない。
部屋から自分を見つめ直すための
お宝が出てくる大事な月。
ニワトリだった時代を思い出す
無くてはならない月なのである。