ちょうどいい幸運

2024/01/15

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

160キロ超えの球を投げるピッチャーや
100メートル走で10秒を切るような陸上選手の走力は、
血の滲むような努力の賜物であるにせよ、
その能力は、
神から与えられし天からの贈り物ともいえる。

彼らのような成功者には
必然か偶然か強運が備わっているもので、
これは絶対的な真理でもある。

自分の人生を振り返ってみると、
ツイていたと思えることは、
ロクに勉強もせずに大学に入れたことくらいで、
次に思いついたのは、
小学4年生の頃にブラックモンブランで
二連続で当たりが出たこと、
というレベルである。

40年も生きていれば、
福引きでハワイ旅行が当たったり、
彼女の誕生日の数字で買った馬券が万馬券になったり、
痴漢から救った女性と結婚まで発展したりと、
強運の持ち主なら何かひとつは経験しているはず。

実際、上記の奇跡は、
全て私の知人が体験しているものだし、
うちの弟は、25年前に
『月刊ジャンプ』の懸賞で、
50万人の応募があった中、
1人しか当たらない
1等のセガサターンを当てたことがある。

ちなみに、私の福引きの
最高記録は真っ赤な玉が出てきて
鐘をチリンチリン鳴らされ、
渾身のガッツポーズをしたときにいただいた
10キロの米である。

さらに、強運を持つ人は、
その日、その時間、その場所で、
まるで奇跡としか思えない出来事でのし上がる。
JRAの騎手である三浦皇成は、
幼少のころ電車で席を譲った女性が有力馬主で、
そのときの縁がもとで
将来の騎乗依頼につながったという。
嗚呼、素晴らしい奇跡。
私にだってひとつぐらい、
人生を変えるくらいの奇跡があったっていいじゃない。
いや、人生を変えるくらいなんて言わない。
日常のほんの小さな喜びでいいんだ。
たとえば、釜揚げシラスを買ったら、
おまけ程度で入っているちっちゃなカニが
シラスより多かった、とか...。
そんなことあるか!
日常の、とか言いながら
これはもう天文学的な確率。

...それなら、ゴルフでホールインワンとか。
そんなことでいいのだけど、
まずはゴルフを始めなければならない。

ちょうどいい幸運って、
なかなかないものだが、
要は、抽選を受けていないのが原因なのではと
気付いた今日この頃。
ゴルフをプレーしなければ、
ホールインワンすることはないし、
懸賞に応募しなければ、
セガサターンは当たらない。

どうせ当たらない、
どうせ無理だと抽選すら受けなかった。
そりゃ幸運なんてやって来ないぜ。

今年は、より多くの抽選を受ける年にしたいと
切に思う今日この頃。
まずは、馬主っぽい老婆に
席を譲ることから始めてみようと思います。