ボラギノーラー

2024/03/04

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

自宅でパソコンの前に座って
仕事をする者にとって椅子は命。
椅子に不具合が生じると、
競輪選手のサドルがブロッコリーになるのと
同じぐらいの支障が出るわけだ。

命の次に大事な椅子が悲鳴を上げたのは5日前。
YouTubeで井上尚弥VSマーロン・タパレスを観ていたら
興奮がMAXに達し、
寄りかかった拍子に背もたれがバキバキバキっ。
そのまま後ろに倒れる事態となった。

幸い、背後にはソファーが置いてあったため
後頭部強打による還らぬ人は避けられたけれど、
原稿に行き詰まったときに
何度も私を支えてくれた背もたれが壊れた。
これを後ろ盾をなくしたというのだろうか。
やかましーわ。

それから、
なし崩し的に肘おき、
お尻部分と破損が進み
たった5日間で、
泳げもしない老人が
無理矢理バタフライをしようとしているような
格好の切ない椅子になってしまった。

そして、
何よりも不幸なことに
この5日で私のお尻に異変が生じ始めたのである。

椅子の役割を果たしているのは、
お尻が乗る部分の中央だけ。
知り合いにラバウルの生き残りだと自慢する
爺がいるのだが、
彼と同じぐらいしぶといようで、
周りが殺られてもそこだけは
前以上に硬くなって残っている。
そいつに私のお尻はすべてを奪われ、
痔ではないかと思う症状がいくつか出ているのだ。

ああ、私もついに
ボラギノーラーになってしまうのか。

...ボラギノーラーとは
痔の薬・ボラギノールの愛用者のことで、
決してボウリングがうまい人のことを
指すわけではない。
ボラギノーラーになる前に
椅子を買い換えたほうがいいとは思うのだが、
実は、椅子ってけっこうな値段。
5万、10万当たり前の世界で
躊躇してしまうのだけど、
椅子がしっかりしていればもしかしたら
原稿が捗るかも知れないとの思いもある。

椅子を変えてなにも捗らなかったら
それはそれでピンチなので、
年末に良い椅子を買っていた
弟とかに相談して
新しい椅子を買おうと思う。

ボラギノーラーには、
まだなりたくない。