耳栓依存症

2024/03/18

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

2週間ほど前から家にいるときは
常に耳栓を装着するようにしている。
というのも、何回か前に書いた
階下からの騒音に悩まされているからである。

あまりのストレスに片頭痛が発症したので
物は試しと着けてみたら効果抜群。
絶対に手放せない存在となり、
いまや耳栓依存症である。

これまで、このコラムでも
何度か耳栓について説いてきたが、
周囲の音が聞こえ辛いとか
色々と不便を感じる方が多く、
未だに耳栓を布教するには至っていない。
しかし、ひとつ主張したいのは、
周りの音が聞こえないということはなく、
余計な音がカットされる感じだということ。
いわば、アナログなノイズキャンセリングである。
目覚ましの音もちゃんと聞こえるし、
テレビは字幕で見ればいい。

欠点は、自分がどれくらいの音量で
喋っているのかわからないことくらいなので、
一人住まいの方は、是非一度試して欲しい。
もし、頭痛や耳鳴りに苦しんでいるならなおのこと。
耳を休めることで、
それらの症状がなくなったり緩和される。
これは、長年片頭痛に悩まされている
私が言うのだから信じて欲しい。

...って、私は耳栓の宣伝マンか?

これを読んだ人の9割が、
その日のうちに近所の100均の耳栓を買い占め、
一時期のマスクと同じように
店から耳栓が消える現象に発展。
不思議に思った耳栓会社の社長が原因を突き詰めると、
このコラムが発端であることが判明。
そして、自分は会社から表彰を受ける。

「君が当社の製品を推してくれた荒木くんだね」
「そっす」

そんな挨拶を交わしているうちに、
スペシャルアドバイザー就任を打診され、
世界を驚かせる耳栓の開発に着手...
といった青写真を描いている今日この頃である。

そんな中、
やっと階下から聞こえてくる
謎の音の正体が判明したので報告。

実は、うちの階下には、
ファミリーレストランのガストが入っていて、
私の部屋の下には、
従業員が出入りする裏口のドアがある。
朝から晩まで鳴り響いていた爆音は、
そのドアがものすごい勢いで閉まる音だった。

ガストは、宅配サービスを行っているため
デリバリースタッフが配達に向かう度に
そのドアが開閉され、えげつない音が鳴り響く。
閉まるときの衝撃を緩和する機構が
バカになっているのだろう。

耳栓越しでも不快だったため、
悩んだ結果、苦情を入れることにした。
思い立ったタイミングが夜だったため、
本部宛にメールを入れる。

「OO店の上の階に住む住人です」

と始まったそのメールは、
他人事のようだが、
恐ろしい恨みを含んだ文章に仕上がり、
効果抜群だったようで、
なんと、次に日にはドアが修理された。

耳栓に関しては、
これからも装着していく。
世の中は雑音だらけ。
余計な音は聞く必要がないのである。