第二次サジマブーム

2024/05/13

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

今、密かに楽しみなのがマッサージである。
以前も通っていたのだが、
コロナ禍をきっかけにパタリ。
今回は、第二次ブームと言っていいだろう。

最近通っているのは、
都内でよく見かける
3000円前後で60分もみほぐしコースが
受けられるチェーン店。
たまたま近所にあるのを見つけ、
2週間に一度のペースで通っている。

安価とはいえど、
私は少しでも良いサービスを受けたい
欲張り人間であるが施術師も人間。
人によって技術に差があるので、
最初のうちに自分に合う方を見つけ
永久指名するのが合理的といえるが、
80点に甘んじて
大魚を逃してしまう可能性がある。
そう考えると、なかなか指名はできず、
時には30点を引いてしまうこともある。

しかし、マッサージとは、
それを楽しむゲームでもあるのだ。

マッサージは基本的にうつ伏せになり、
肩、背中と進んでいくパターンが多い。
その初手で、背中をさすって
伸ばす行為から始まるのが一般的だが、
私はこのひとさすりで、
その人の技術力がほぼわかる。
力の入れ方、手の角度、
つまり、フォームがしっかりしているのだ。
まるで、大谷選手が打席に立ったときのような、
「打ちそう感」というのだろうか。
私はそれを初手で見抜くことができる。

もし、究極のマッサージ店を経営するのに、
各店から精鋭をスカウトしたいのなら、
私をスカウトマンに任命するといい。

このように、私は2週間に一度、
プロのスカウトマンになった気分で
一日を過ごし、
まさに心身がリフレッシュされるわけだが、
稀に時間と財布に余裕があるときは、
オプションとして足裏コースを付け加える。
こちらに関しては、まだプロの目がない。
誰にやられても、同じ気持ちよさ、
同じ痛みしか感じないのである。

第2の心臓と呼ばれる足裏には、
あらゆる臓器のツボが集中しており、
押した場所によって
病んでいるところがわかるというが、
私はいついかなる場合でも
生殖器のツボがもっとも苦痛を伴う。

イタッ、そこはどこのツボなんですか?
そう問うたびに、口ごもらないで
答えてくれる方がいれば、
施術師として合格だと思うが、
未だにそんなマッサージ師との
出会いはない。

もみほぐしは技術力、
足裏はメンタルを推し量るテスト。
私は2週間に一度、
ミシュランの調査員の如く
近所のマッサージ店に派遣されている。
そう思いながら、
明日もてもみoに出向くのである。

ちなみに、
マッサージは業界用語でサジマという。