幸福度

2024/07/08

荒木建策(放送作家/アリゴ座主宰)

「ネパリコ」という
有名なカレー屋さんに行ってきた。
今日の話だ。
隠す必要などないから言うが、
私の最寄り駅である駒沢大学駅近くの
ネパール料理専門店である。

めっちゃ美味しい。
とっても美味しい。
たぶんネパール人であろう店員さんが親切。
客層も、なんかお洒落。
美味しいスープがお代わり自由。
ネパールを思う存分味わえるお店だ。

ネパールカレーを味わいながら、
ネパール、という国について想う...。
...いや、知らん!!
場所は...
...知らん!!
ブータンの近くだったっけ?
などとぼんやり思いながら調べてみると、
やっぱり隣。

じゃ、もうブータンでいい!
今日はブータンでいい!
ということで、
今回はブータンについて書きます。

ブータンは南アジアにある小さな国。
いわゆる発展途上国と言われる国のひとつ。
経済規模も小さく、
GDPなどの経済指標が
世界にインパクトを与えることなどない。

ところが、
2010年代にブータンが
世界にインパクトを与えるデータが紹介された。
ご存知の御仁も多いかも知れないが、
国連が2013年に公表した
「世界幸福度ランキング」で、
ブータンがなんと
ランキング常連の北欧諸国に続いて
世界8位となったのである。

これは、
ブータンの、
例えばインフラとか発展の各種指標から
考えると驚くべきことで、
これをきっかけに、
ブータンは「世界一幸せな国」として
知られることとなった。

彼らの幸せの基準は、
「雨風をしのげる家があり、
食べるものがあり、
家族がいること」。
不快な思いもしないし、
ひもじい思いもしないし、
寂しくもない...
そうだよな。
人間、それさえあれば「幸せ」なんだよな。
などと思った記憶がある。

しかし、
ブータンは2019年度版のランキングでは
156か国中95位に急落。
それ以降、
ランキングに登場することすらなくなった。

幸福度が高かった当時は「情報鎖国」で
他国の情報が入ってこなかったが、
情報が流入し、
他国と比較できるようになったことが原因。
だと思われる。

極端な表現をすれば、
「井の中の蛙」で幸福だったのに
相対的に自分たちが
貧しい暮らしをしていることが
わかってしまって不幸になったということ。

人は他人と自分を比べてしまう生き物。
そして、ついつい優劣を作り出してしまう生き物。
比較できる情報がなくて幸福だった
ブータンの人々も比較対象ができてしまったことで、
幸せを感じにくくなってしまったのである。

ブータンの人々の暮らしは
決して悪くなってはいない。
そして、比較対象である他国の人々が
ブータンの人々を脅かすわけでもない。
なのに、優劣を感じてしまうだけで、
幸福度は極端に下がってしまうのである。
人の心というものは、
幸福を阻害する仕組みを持っているのである。

ブータンの幸福度の大暴落について、
あなたは何を思うでしょうか。
ブータンの人々は情報鎖国が
続いていたほうが幸せだったのでしょうか?
情報がブータンの人々から
幸福を奪ったのでしょうか?

どう思います?