華麗なるコラム

2024/08/05

荒木建策(放送作家/脚本家)

先日、友達一家がうちに来る機会があったので
なにか作っておもてなししようと思い、
娘さん宛てに
「晩ご飯、何が食べたい?」と訊ねた。
(父親伝)
それに対して、彼女の返答は単純明快。

「カレー!」

私のX(旧Twitter)をご覧の方々は
ご存じだと思いますが、
私は最近、カレーにはまっており、
彼女のリクエストに対して、
二つ返事で了承した。

そのやり取りは来訪の直前だったので、
スパイスをふんだんに使った
本格的なものではなく、
野菜や肉を既成のカレールゥで煮込んで作る
手軽なものにしようと、
子どもはその方が好きだろうと、
調理を始めた。

しかし、
ある程度の仕込みを終えて思った。
ルゥは、何を使うのが正解なのか。
ジャワ、バーモント、こくまろ...
辛口、甘口、中辛...

分からぬ!
なので、
「食べたいカレーのルゥを選んで買ってきて」と
友人(父)宛てにLINEした。

数十分後...
彼らが到着。
あとは、ルゥを投入するだけの
カレーになる前の何かを前に、
「で、何買ってきたの?」と尋ねたところ、
父親であるあの野郎が出してきたのは、

『カレーなる入浴剤』

という商品だった。

愕然とする、という言葉があるが、
私は、このときに人生で初めて
愕然としたかもしれない。

そして、
「本品は入浴剤です。食べないでください」
と、注意書きを大音量で読み上げた。

父である彼は...
狼狽という言葉があるが、
私は、このときに人生で初めて
狼狽している人間を見たかもしれない。

奥さん曰く、
娘さんは、
「食べないでくださいって書いてるけど、
子どもには、辛すぎて無理ってことなのかな?
でも、もうすぐ小学校に上がって
お姉さんになるんだから、
ちょっとくらい辛くても私は食べられるよ」
と言って、
その商品を選んだらしい。
そんな可愛いことを言われて、
彼らは、本当のカレーだと誤認したのだとか。

奥さんも...
「うーん、でも
今日はプリキュアカレーにしておいたら?
これはもう少し大きくなってから作ってあげるから」
そう言って誤魔化したらしいのだが、
「じゃあ、なくさないように2つ買って」と
結局2つ買うことになったらしい。

ということで、
カレーなる入浴剤(大辛)x2が、
私の作ったカレーになる前の何かを前に
用意されたわけだが、
呆れかえった末に
コンビニにダッシュして
バーモントカレーの甘口をGET。

手前味噌だが、
とても美味しいカレーを皆でいただき、
ボードゲームなどを楽しみ、
彼らが去った後、
いったい、
どこのメーカーが
こんな妙な商品を作っているのかと思って調べたら、
まさかのバンダイだった。