グズグズとキラキラ

2024/08/12

荒木建策(放送作家/脚本家)

2ヶ月くらい前に引いた風邪で喉が潰れ、
最近まで治らず、
グズグズの日々を過ごしていた。
やっと回復したと思ったら、
パリ五輪も色々グズグズで、
ずっとグズグズの生活が続いていた。

そんな中、
ふと、
甲子園でも見てみるか、
という気になったので...
見てみた。

チャンネルを回すと、
テレビに映る高校球児が、
三振してベンチに走って帰っていた。
そんな背番号2の彼がやけに眩しかった。
なんかキラキラしていた。

何故こんなに彼の背中は眩しいのか。
いきさつを見てはいないから、
想像を巡らす。

気温33度、
日光が容赦なく降り注ぐグラウンドは
想像を絶する暑さである。
橋本環奈かガリガリ君ソーダ味か、
どちらか選べと言われたら、
高校球児はもちろん、
観客席のブラスバンド部ですら
迷うことなくガリガリ君を選択するに違いない。

カウント、ツーナッシング。
観客はウォーッ、
頭は、ボォーッとする暑さの中、
3球目フォークで
ストーンと落とされて三球三振。
スタンドから聞こえてくる声は
アァーッ...である。

君はバットを天高く放り投げ、
ピッチャーに詰め寄ろうとした。
貴様、遊び玉はなしかよ、と。
ツーナッシングからの3球目を
人差し指と中指の間に挟むのかよ、と。

しかし、
バッターボックスとマウンドの間で揺れる
蜃気楼を見て、君は思い直す。
この暑さは自分のみならず
ピッチャーも骨身にこたえているはず。
遊び玉を投げるほどの体力が、
彼には残されていなかったのではなかろうか...。

身勝手な考えで腹を立てた自分を、
君は恥じた。
すぐにでもこの場を離れたいとの思いから、
おそらくは逃げ帰るようにベンチへと走ったのだろう。

そんな君が、
私にはとても羨ましく、
眩しく映ったのである。

私だったら間違いなく担架を呼ぶ。
うだるような暑さに弱った身体をさらし、
その上、三振まで食らったら
走るどころか歩いて帰る自信すらないから、
バッターボックスで寝ながらベンチに電話して、
担架を回してもらう。

こんな日差しの中、
野球をしているというだけで尊敬。
三振した彼ですらキラキラして見える甲子園、
初めて決勝まで追ってみようかと思った。

恥ずかしながら、
今日、初めて知ったのだが、
私の出身地である長崎県からは、
創成館高校が出場している。
本日8月11日に白樺高校(北北海道)を下し、
2回戦進出!
ウォーッ!

いつもと違う夏が今日、
始まったような気がする。