訴訟ワールド

2024/08/19

荒木建策(放送作家/脚本家)

電子レンジで猫を乾かしたら死んだ...

普通に真っ当に当然に
生きてきた人間にとっては、
あ然とする話だが、
説明書には猫を入れるなとは書いていなかったと
電子レンジメーカーを訴えたり、
コーヒーを買った時にやけどをしたのは、
紙コップが薄かったせいだと
紙コップメーカーを訴えたりするのが、
今の世の中。

もう、何が起こるか分からないし、
どんなモンスターと出会うかも分からない。
洗濯機でペットを洗おうとする人がいても、
必勝と書いてある参考書を買ったのに落ちたと
訴訟を起こす人がいても、
不思議ではないのである。
だから、
もしかしたら...と考え、
先手を打っておくに越したことはない。

先日のカレーなる入浴剤にしたって、
それがカレー売り場に置いてあったとしても、
中身を出してなお、
口にする人はいないだろう。
ましてや、カレーなる入浴剤が置いてあったのは、
スーパーの中に入っていたドラッグストアだし。

だが、しかし、
可能性はゼロではない。
もしも誰かがカレーなる入浴剤を口にして、
そして、
「形状があまりにもルゥに似すぎている」と
訴える。

日本でこんな訴訟が起こるとは考えづらい上に、
もし訴えられたとして高額の賠償金が
発生するとは思えないわけだが、
それでも、可能性はゼロではない。

「入浴剤」というワードが商品名に
入っているにも関わらず、
「これは入浴剤です」
「たべられません」と但し書きがあるのは、
念には念を、というわけなのだろう。

だから、
そこら辺の受験本も
「必ず受かるわけではありません」と
書いておいた方がいいかも知れないし、
勝=受かる、ではないと
但し書きをした方が
無難なのかも知れない。

話は変わるが、
といっても、さほど変わらないというか
地続き感があるから書くのだが、
先日、カリフォルニアのディズニーワールドで
ナッツアレルギーの女性が、
何度も確認したにも関わらず、
提供された料理にナッツ類が使われており、
アナフィラキシーショックで死亡するという
不幸な事件が起こった。

それに対し、
女性の夫である男性は、
5万ドル...
たった5万ドルの賠償を求めて、
ディズニーを提訴しようとしたのだが、
ディズニー側は、それを拒否した。

その根拠として
ディズニー側が主張したのは、
普通に真っ当に当然に
生きてきた人間にとっては、
理解しがたい言い分だった。

ディズニーは、
「夫」がサブスクサービス
「Disney+(ディズニープラス)の
無料体験版に登録していた過去があり
登録当時の約款に
「貴下と当社間の紛争は
集団訴訟放棄が適用され個別仲裁により
解決されなければならない」と
記されていることを理由に
裁判ではなく仲裁によって
解決しなければならないと
主張したのである。

先に私は、
もしかしたら...と考え、
先手を打っておくに越したことはない。
と書いたが、
さて、ディズニーの主張は、
これに当てはまるだろうか?

ディズニーの動画を観たくて
サブスク登録したら、
パーク内で先方の不手際で
殺されたとしても、
その約款に従って
個別仲裁に応じなければならない...
のか?

そんな馬鹿な話があるか。
今回の件で
米ディズニーの評判は地に堕ちた。

ディズニーがこの世で一番好きな
私ですら、
正直、5万ドルで済むなら、
スッと払えよと思ったし、
ディズニー糞だなー!と
セブンイレブンの前で叫んだのだが、
私はオリエンタルランドのファンなので
問題はないのである。