サバイバル工事

2024/11/18

荒木建策(放送作家/脚本家)

浅い眠りから覚め、
ふと視線を上げると、
山手線の窓に
くたびれたおっさんが映っていた。

目に力はなく、
口は半開き、
縒れたシャツのフロントの
第2ボタンは留まっているのに
第3ボタンが開いている。

疲れているのかもしれないが、
それにしたってあまりにだらしない。
しかもヒゲに見えるアレは
もしや鼻毛ではないか...。

怖いもの見たさもあって
目を凝らしてみれば
白無地ののシャツに白マスク、
頭はイケてるプリン金髪。
窓ガラスに映っていたのは
他の誰でもない、
自分自身だった。

隣にドカベンの岩鬼がいたら、
葉っぱをくわえたまま
ドヤされるように思う。
「や~まだ、何さらしとんじゃい!!」

しかし、
「オレは山田じゃないよぉ」と
言い返せぬほどカラッカラに
渇いているのは、
朝方までさいとうたかをの
サバイバルを貪り読んでいたからか。
それとも朝っぱらから
目の前の道路を掘り返していたからか。
どちらか一方に
責任を押し付けるのも気が引けるため、
ここは間をとって、
私から潤いを奪った理由を
「サバイバル工事」と
名付けたいのだがどうだろう。

それが駄目なら、
「滝川クリステル」に
僅かながらも語感が似ている
「工事サバイバル」でも構わない。
一向に構わないので、
書棚に並べてあったはずの、
サバイバルの二巻が
出てきてくれると嬉しいのだが...。

しかし、
まあ今夜は大人しく寝るとしよう。
明日の午前中、
カフーによく似たいかつい
先輩と会う約束がある。
寝過ごしたら、
まさに一巻の終わりですから。