ブラックフライデー

2024/11/25

荒木建策(放送作家/脚本家)

ここ数年で、
「ブラックフライデー」というのを
よく聞くようになった。
この店でもブラックフライデー、
あの店でもブラックフライデー。

そもそも、
ブラックフライデーとは、
アメリカの感謝祭(11月第4週の木曜日)の
次の日の金曜日のことで、
日本には全く関係のないイベントである。

アメリカ人は、
感謝祭の日に休暇(休日ではない)を取って、
プレゼントやらご馳走やらを買い込み、
盛大に祝う慣習がある。
次の日の金曜にはその在庫一掃セールとして、
小売店で大幅な値下げがされるのだ。

その現象は、
ある時期自然発生的に起こったものらしく、
ついには、アメリカ全土を巻き込んだ。
感謝祭の翌日は、全米が買い物客でごった返し、
小売店の多くが年間で一番の売り上げを叩き出す
お店にとってはウハウハの
掻き入れ時となったのである。

一方、我先にと商品を求める人々の間で
多数のいざこざが発生するため、
一年で最も警察の出動が多い日ともなった。
その皮肉として「ブラックな金曜日」、
つまりブラックフライデーと
呼ばれるようになったというのが定説。

小売店の収益が黒字になるから、
という説もあるが、
こちらは近年になり、
悪い意味でのブラック感が
無くなってから云われ始めたものらしい。
日本のメディアが、
後者を使うのは、
単なるアメリカへの配慮なのか。

ちなみに、
日本で最初にアメリカに合わせて
ブラックフライデーというイベントを
行ったのは2014年、
『トイザらス』である。

とまあ、このように
日本には縁もゆかりもないイベント事である
ブラックフライデーだが、
このまま11月のイベントとして
定着することになるのだろう。

クリスマスやバレンタインデーに始まり、
母の日、父の日、ハッピーハロウィン。
4月1日には嘘があふる。
その内、イースターはもちろん、
アメリカ独立記念日まで
祝い始めるのではなかろうか。
プライドニューヨークならぬ、
プライドトウキョウなんか始めたら、
私は海外移住か山奥への引っ越しを
考えるだろう。
日本の文化盗用か、
アメリカ文化の流入による文化汚染か侵食か...。

それはさておき、
話を戻すと、
今週金曜日はブラックフライデー。
まだ、口にするには馴染みが薄く、
どこかむず痒いのだが、
庶民にとってはありがたい
投げ売りの日であることは確か。

ここまで言ってなんだが、
利用できるだけ
利用させてもらおうと思っている。

とりあえず、
あたたかい布団を買うのは確定している。