スケジューリング悪夢

2025/02/03

荒木建策(放送作家/脚本家)

皆さんは、
よく見る夢というのはあるだろうか?
プロ野球選手になりたいとか、
宝くじで一攫千金とかではなく、
寝ているときに見る夢の方である。

仕事の夢を見るという人は多いが、
私は、文章を書いたり、
制作会議でプレゼンしていたりなどという
仕事にまつわる夢を見ることは皆無。

現実で満足しているから見ないのか、
それとも、何か別の理由なのか分からないが、
兎に角、仕事に関係する夢は
一切見なかったのである。
今までは。

最近、よく見るようになった夢がある。
それは、収録に遅刻する夢。
「ヤバイ!寝坊した!」
と夢の中で飛び起きるのだ。
(実際には、まだ夢の中)

実は、今年からある帯番組内のコーナーで
収録の現場を仕切る仕事を任されることになり、
もし私が遅刻すると撮影ができないという状況が
起こり得る立場となった。

絶対に遅刻できないというプレッシャー。
これが、そんな夢を見せているのか?

収録現場には、カメラマンさんだったり、
ディレクターさんだったり、
演者も多くの人が関わっているし、
そんな尊重しなければならない相手を
待たせてしまうというプレッシャーが
自分が想像している以上に強いのかも知れない。

同じような立場の人に聞いたら、
遅刻する夢はないけど、
現場で急に声が出なくなる夢を見ると言っていた。
かなりの頻度で見てしまう悪夢なんだと。
それと比較すると、
自分は時間にさえ間に合えばどうにかなる、
と考えている楽天家なのかも知れない。
そう、間に合えばいい、
間に合えばいいのだ。

ここで、小噺をひとつ。

あるところにひとりの放送作家がいました。
初めての番組収録の前夜、
彼は目覚ましをふたつセットし、
入念に準備して床に就きます。

当日は、目覚め良好。
さあ、今日は収録だと現場に向かいました。
スタジオがあるのは、
東京にある有名テレビ局です。

入構証を使って局内に入り、
スタジオまで移動。
中で待機中の技術班を見つけ、
おはようございますと挨拶をしたのち
コーヒーを一杯飲みつつ、
今日もしっかり間に合ったと安堵します。

ところが、
彼はスタッフと談笑したりしている時に
「何かおかしいぞ」と感じ始めました。
そして...

「ところでOOさん、今日はどうしたんですか?」

スケジュール帳を見返す作家。
「あっ!担当日、明日だ!」

その放送作家が誰とは言いませんが、
これを怖い話だと捉えるか、
笑い話と捉えるか、
それは受け取り方次第。

...我ながら、怖い話だと思います。