ランチメイト症候群のあいつ
2025/02/17
荒木建策(放送作家/脚本家)
デパートとかドラッグストアや衣料品店を
内設するスーパーのトイレには
様々なゴミが落ちている。
特に個室。
買ったばかりのCDをすぐに取り出して
そのゴミをポイ、とか、
購入した衣類をそのまま来て帰るために
トイレの個室に寄って、
付いていた値札やタグをポイ。
ついでに手提げ袋もポイ。
そんな感じである。
マナーが悪いというよりは、もはや、
どうしてゴミ箱を置いておかないんだろう、
と思ってしまうほどの日の常。
しかし、
先日、目撃したゴミはちょっと違った。
そこは、いつも使っている普通のスーパー。
買ったものを身につけて帰ろう、なんて人が
何かを買いにくるような場所ではない。
そんなところのトイレに放置されていたゴミ。
それは...
弁当の空き箱だった。
もしかしたら、
その辺の公園で食べた弁当の殻を
そこで捨てたのかも知れないが、
空き箱は剥き出しの状態で置かれていたし、
割り箸が箱の内部から飛び出ている状態で、
なにか「ここで食べました」という
オーラを纏っていたのである。
スーパーのトイレで弁当を食べる状況。
そして、その人物について考察してみると、
間違いなくこうである。
そのスーパーの近所で働く彼は、
昼休憩に一緒にランチを共にする者がいない。
新卒1年目の彼は元文化部。
体育会系の同僚たちとは馬が合わず、
少し浮いた存在である。
だから一緒にランチを摂る仲間はおらず、
入社当初は、毎日コンビニ飯で済ませていた。
しかし、心無い先輩や上司からの
「今日もコンビニ?」というひと言で、
彼はコンビニ飯さえできなくなった。
そんなある日、
彼は職場から2番目に近いスーパーへ立ち寄る。
弁当を買い、さてどこで食べようかと考えながら、
併設されたトイレにふらっと入った瞬間、
彼にとってそこは「聖地」となった。
「ここや...。ここで...ええんや」
それからというもの、
彼は毎日トイレに通い、
便所飯をかましているのである。
彼はいわゆる「ランチメイト症候群」。
人目につく場所で、ひとりで食事をしていると、
「一緒に昼食を摂る仲間がいない人間だ」と、
他者から思われてしまう。
こうした強迫観念から、
友達もいない寂しい人間、
変わった人間に見られたくないという一心で、
たとえ、スーパーの便所であったとしても
「聖地」と設定してしまう、
彼は、現代社会が生んだ
自意識モンスターなのである。
彼...いや、彼らは、
ひとりで食事を摂ることそれ自体よりも、
その姿を他人に見られることに恐怖を感じるのだ。
この現象は学生だけにとどまらず、
若いOL等にも多く見られるのだという。
彼らが徹底的に避けたいのは
「あいつは友達がいないやつだ」と思われること。
そういえば、
若い頃、友達がいないと思われるのが嫌で、
そんなに仲良くないクラスメイトと
机をくっつけて弁当食ってたことあったなぁ。
令和の時代を生きる君たちもそうなのか。
同じだねぇ...。
デパートとかドラッグストアや衣料品店を
内設するスーパーのトイレには
様々なゴミが落ちている。
特に個室。
買ったばかりのCDをすぐに取り出して
そのゴミをポイ、とか、
購入した衣類をそのまま来て帰るために
トイレの個室に寄って、
付いていた値札やタグをポイ。
ついでに手提げ袋もポイ。
そんな感じである。
マナーが悪いというよりは、もはや、
どうしてゴミ箱を置いておかないんだろう、
と思ってしまうほどの日の常。
しかし、
先日、目撃したゴミはちょっと違った。
そこは、いつも使っている普通のスーパー。
買ったものを身につけて帰ろう、なんて人が
何かを買いにくるような場所ではない。
そんなところのトイレに放置されていたゴミ。
それは...
弁当の空き箱だった。
もしかしたら、
その辺の公園で食べた弁当の殻を
そこで捨てたのかも知れないが、
空き箱は剥き出しの状態で置かれていたし、
割り箸が箱の内部から飛び出ている状態で、
なにか「ここで食べました」という
オーラを纏っていたのである。
スーパーのトイレで弁当を食べる状況。
そして、その人物について考察してみると、
間違いなくこうである。
そのスーパーの近所で働く彼は、
昼休憩に一緒にランチを共にする者がいない。
新卒1年目の彼は元文化部。
体育会系の同僚たちとは馬が合わず、
少し浮いた存在である。
だから一緒にランチを摂る仲間はおらず、
入社当初は、毎日コンビニ飯で済ませていた。
しかし、心無い先輩や上司からの
「今日もコンビニ?」というひと言で、
彼はコンビニ飯さえできなくなった。
そんなある日、
彼は職場から2番目に近いスーパーへ立ち寄る。
弁当を買い、さてどこで食べようかと考えながら、
併設されたトイレにふらっと入った瞬間、
彼にとってそこは「聖地」となった。
「ここや...。ここで...ええんや」
それからというもの、
彼は毎日トイレに通い、
便所飯をかましているのである。
彼はいわゆる「ランチメイト症候群」。
人目につく場所で、ひとりで食事をしていると、
「一緒に昼食を摂る仲間がいない人間だ」と、
他者から思われてしまう。
こうした強迫観念から、
友達もいない寂しい人間、
変わった人間に見られたくないという一心で、
たとえ、スーパーの便所であったとしても
「聖地」と設定してしまう、
彼は、現代社会が生んだ
自意識モンスターなのである。
彼...いや、彼らは、
ひとりで食事を摂ることそれ自体よりも、
その姿を他人に見られることに恐怖を感じるのだ。
この現象は学生だけにとどまらず、
若いOL等にも多く見られるのだという。
彼らが徹底的に避けたいのは
「あいつは友達がいないやつだ」と思われること。
そういえば、
若い頃、友達がいないと思われるのが嫌で、
そんなに仲良くないクラスメイトと
机をくっつけて弁当食ってたことあったなぁ。
令和の時代を生きる君たちもそうなのか。
同じだねぇ...。