理想のセンター
2025/06/16
荒木建策(放送作家/脚本家)
最寄り駅に併設されているマクドナルドの中で
20代だと思われる2人の男性が
熱い議論を交わしていた。
聞かずとも聞こえてくる熱量。
会話の内容も自ずと伝わってくる。
どうやら「センター」について語っているようだ。
相変わらずの勢いでメディアを賑わす
乃木坂46だったか櫻坂46だったか、
次期センターについて、
まるで彼女らを中心にこの世が回り、
それを支えているのは自分らと言わんばかりの
勢いで話が進んでいた。
「もう、~坂は若返るべき」
「いやいや、センターは風格が必要」
あんたらの推しメンは誰なんだ?
と少し気になったのだが、
結局、答えは聞き出せず、
悶々とした時間を過ごしたわけだが、
私の心の中で理想のセンターは存在するので、
彼らが答えを出したところでブレることはない。
やや色黒でスタイル抜群。
キュートな笑顔が特徴だ。
数字は46ではなく49。
そう、クロマティである。
子どもの頃、
初めて外国人という存在を知ったのが
ウィッキーさんとクロマティで、
前者は元気なおじさん、
後者はスーパースターの位置付けだった。
当時5、6歳だった私の周りにも、
(ゲームにも登場していたし)
クロマティのファンは多く、
一番仲の良かった友達は、
お気に入りの私服が
巨人のユニフォームを模したスウェットで、
色はビジターで使用される水色だったことを
何故だが鮮明に覚えている。
もちろん背番号は49。
日本中が今の大谷選手と同じくらいに
クロマティという選手を愛していた。
その時、球場の真ん中にいたのは
ピッチャーではなく、
その名の通りセンターにいる外国人だったのだ。
当時、男の子の憧れの職業は警察官、消防士。
田舎では大工や漁師も多かったと記憶している。
今のようにプロスポーツ選手が
憧れの職業で上位にランクインしない時代に
私の夢はジャイアンツのセンター。
乃木坂だか櫻坂だかのセンターを争う男性たちが
生まれるずっと前から
私はセンターを目指していたというのに、
今や、すっかり色んな意味でベンチ外。
それなのに、
誰がセンター争いや論争に参加できようか。
自分が頑張っていないのに、
頑張っている人を応援するなんて愚の骨頂。
そんなことを思っていたら、
居酒屋に貼っていたポスター。
「踏み出せていないのはあなただけ」
そうか、まだ遅くないんだ。
一瞬そう思って、写真まで撮ってしまった。
プロ野球のセンターになるには完全に遅いのだが、
他のことでセンターを獲れる可能性はある。
もうちょっと、頑張ってみよう。
居酒屋で愚痴って酔って情けなくなって、
トイレで目にしたポスターに
ハッと気づかされることって、
たまにあるんですよね。
ないですか?
最寄り駅に併設されているマクドナルドの中で
20代だと思われる2人の男性が
熱い議論を交わしていた。
聞かずとも聞こえてくる熱量。
会話の内容も自ずと伝わってくる。
どうやら「センター」について語っているようだ。
相変わらずの勢いでメディアを賑わす
乃木坂46だったか櫻坂46だったか、
次期センターについて、
まるで彼女らを中心にこの世が回り、
それを支えているのは自分らと言わんばかりの
勢いで話が進んでいた。
「もう、~坂は若返るべき」
「いやいや、センターは風格が必要」
あんたらの推しメンは誰なんだ?
と少し気になったのだが、
結局、答えは聞き出せず、
悶々とした時間を過ごしたわけだが、
私の心の中で理想のセンターは存在するので、
彼らが答えを出したところでブレることはない。
やや色黒でスタイル抜群。
キュートな笑顔が特徴だ。
数字は46ではなく49。
そう、クロマティである。
子どもの頃、
初めて外国人という存在を知ったのが
ウィッキーさんとクロマティで、
前者は元気なおじさん、
後者はスーパースターの位置付けだった。
当時5、6歳だった私の周りにも、
(ゲームにも登場していたし)
クロマティのファンは多く、
一番仲の良かった友達は、
お気に入りの私服が
巨人のユニフォームを模したスウェットで、
色はビジターで使用される水色だったことを
何故だが鮮明に覚えている。
もちろん背番号は49。
日本中が今の大谷選手と同じくらいに
クロマティという選手を愛していた。
その時、球場の真ん中にいたのは
ピッチャーではなく、
その名の通りセンターにいる外国人だったのだ。
当時、男の子の憧れの職業は警察官、消防士。
田舎では大工や漁師も多かったと記憶している。
今のようにプロスポーツ選手が
憧れの職業で上位にランクインしない時代に
私の夢はジャイアンツのセンター。
乃木坂だか櫻坂だかのセンターを争う男性たちが
生まれるずっと前から
私はセンターを目指していたというのに、
今や、すっかり色んな意味でベンチ外。
それなのに、
誰がセンター争いや論争に参加できようか。
自分が頑張っていないのに、
頑張っている人を応援するなんて愚の骨頂。
そんなことを思っていたら、
居酒屋に貼っていたポスター。
「踏み出せていないのはあなただけ」
そうか、まだ遅くないんだ。
一瞬そう思って、写真まで撮ってしまった。
プロ野球のセンターになるには完全に遅いのだが、
他のことでセンターを獲れる可能性はある。
もうちょっと、頑張ってみよう。
居酒屋で愚痴って酔って情けなくなって、
トイレで目にしたポスターに
ハッと気づかされることって、
たまにあるんですよね。
ないですか?