空手黒帯の私が語るバキ

2025/08/04

荒木建策(放送作家/脚本家)

昔から格闘漫画、寿司漫画、
ギャンブル漫画にはうるさく、
とりわけモノマネのしやすい格闘漫画は、
小学1年のときに空手を初めてから、
私の中で一層熱を帯びた。

女子と子どもが勘違いしやすいのが、
手からエネルギー波が出たり
腕が伸びたりするものを
格闘漫画のカテゴリーに収めてしまうこと。
本当の格闘漫画とは肉体と技で
シバキ合う男のロマンなのだ。

小学生当時、滅茶苦茶はまっていたのが、
『修羅の門』『修羅の刻』シリーズ。
陸奥圓明流を継ぐ主人公が、
異種格闘技戦でプロレスラーやら
ボクサーやらをバッタバッタと倒していく
爽快ストーリー。

しかし、この作品に関しては、
連載が『月刊ジャンプ』だったので、
語れる友人はひとりもいないのが悲しい。
だが、
『バキ』に関しては、
バキを語り合ったら朝まで飲める友達、
バキ友が多数いる。
登場キャラの中で誰が好きで誰が強いか、
その終わりのない論議を続けられる。

ここで、今回はバキシリーズの名言を抜粋して、
バキのことを深く知ってもらおうと思う。

「これはこれは…お久しぶりです…師匠…(範馬刃牙)」

なんてことはない、
師匠に対する普通の挨拶にも思えるが、
この師匠とはゴキブリのこと。
ゴキブリが筋繊維ではなく
液体を動力の源にしていたことをヒントに、
自らの身体を液状にするイメージに成功。
このシーンは壁をはっていた
ゴキブリに対しての言葉である。
「日に30時間の鍛錬という矛盾。
この矛盾をひたすら鍛錬の密度を高めることで補う」

これはドーピングの副作用に耐えながら
修行を重ねるストイックなキャラを評してのもの。
日に30時間。24時間を超えている。
作者である板垣恵介ワールド全開。

「人体をタンパク質とカルシウムでしか
語れネェ医者にはわからネェ世界だろうよ(愚地独歩)」

車椅子に乗って意識のない格闘家が、
自らをボコボコにした相手の前で意識を回復させ、
襲いかかるそぶりを見せたところで、
相手は失禁して降参。
その様子を驚くように見ていた医師に対して
空手家の師範•愚地独歩が放った一言。

もし病院に行って、まぁおそらく風邪ですねと、
軽く医者に流されたら椅子から立ち上がって、
この言葉を贈ろう。
さあ、どうだ。
あなたもバキが気になってきたでしょう。

読みましょう。