オカルトへの誘い

2025/08/18

荒木建策(放送作家/脚本家)

ここ一ヶ月ほど、
心霊系を含むオカルト動画を
見る頻度が異常に高くなってきた。

ピラミッドは宇宙人が作っただの、
月の裏側には巨大人口建造物があるだの、
あの旅館の部屋には幽霊が出るだの、
誰かの妄想や作り話で、
99%真実ではないと分かっていながらも、
気付くと何故か見はまっているのである。

そんな新たな嗜好を得た中での出来事。
ある日の深夜2時。
最も心霊現象が起きやすい時間帯である。

これまで心霊体験といえば、
夜中に風呂へ入ろうとしたら
祖母の脱衣シーンに遭遇したことぐらいで、
それ以外は皆無。

だからこそ、
執筆中に後ろから聞こえてきた
「カサッ、カッ、カッ」という物音には
恐怖を覚えずにはいられなかった。

パソコンの右下に表示された時刻は午前2時。
はっきり言って、すでに遅れている原稿書きに
これっぽっちも集中できないが、
逆にいえばチャンスにも思えた。

まずもって、振り向くことはできないし、
トイレに行くなんてもってのほか。
よって、パソコンの画面に集中するしかなく、
年に一度あるかないかの、
原稿神速ゾーンに入れるかも知れない。

でも、やはり気になる。
気持ちが押されているせいか
原稿の中の芸人のコメントはずいぶんと
後向きな内容になっていくが、
怖すぎて首の方向だけは前向き。

このままの精神状態では
原稿なんて書けやしないので、
意を決して振り向くことにした。

勇気を出して音の方向をみると…
そこには昼間に見たらかわいい人形たちが、
まるで自分を監視するような凄味のある形相で
こちらを見ていた。
音の正体はその横にある
カーテンによるものだと思うが、
あの視線は一体…。

そこで気付いた。
あ!あぁ、こいつら原稿待ちしてる
担当ADの生霊憑いとんな!!
そう思って、一旦、皆様には後ろを向いてもらった。
というくだらない話。

最後に…
オカルト好きは見た目より30歳若く見える、
なんて話があるらしい。
熱狂的になにか好きなことがある人は、
たしかに若く見える。
ならば、若さのために
オカルトを極めるのもアリなのかも知れない、と
今、オカルトの誘いに負けかけているが、
それ自体がオカルトだとも思っている。