会館飲み

2025/09/22

荒木建策(放送作家/脚本家)

もう何度目だろうか。
また、京都にいる。
旅行に来たのは一度目だけで、
後は全て冠婚葬祭。

ほとんどは「婚」だし
今回もそうなのであるのは、
ありがたき幸せ。

京都まで呼ばれるということは
身内みたいな付き合いの人間の祝い。
だから、大体、東京から呼ばれる
メンバーも同じような面子なのだが、
我々が特殊なのは、
現地集合現地解散、
なんなら宿も違って
各々がどこに泊まっているのか、
空き時間にどこを観光しているのか、
知らないことが
当たり前だということである。

私は今回、友人たちには黙って
一泊余分に滞在し、
前々から行ってみたかった
京都三大ディープ酒場と呼ばれる
「リド飲食街」に向かった。

昭和の匂いプンプンの飲み屋街。
ここで一人打ち上げをする。
それぞれのお店が
カウンター式になっていて、
昔お姉さんだった人たちが
いらっしゃる。

訪れたのはおばんざいのお店。
席のスペースは奥行き80㌢くらい、
5席ほどのカウンターのみの空間。
これぞ「会館」と呼びたくなる趣。

会館とは、京都に多い酒場の形で
町家の内部を分割して
複数の飲食店が入居している
飲み屋の総称らしい。

というような
お話を聞いているうちに、
目の前にはいつの間にか
小皿に盛られたおばんざいが。

「お客さんの顔をみるとね、
この人は何を食べたいか
分かるようになってきました」

きんぴらごぼう、
ほうれん草のごまよごし(?)
赤こんにゃく。

嘘つけー!!
と思いながら食べてみると、
出汁がしっかりと利き、
優しい甘辛さを感じる京料理に
本当に感激してしまった。

その後、お姉さんの名前が
「荒木」さんだと判明してまた感激。
ばばあとの夜は更けていくのでした。
(「じじばば」というお店が
一番有名らしい)