サイゼリヤは疲れる

2025/10/06

荒木建策(放送作家/脚本家)

家にいると誘惑が多くて仕事が手につかない、
だから、近所のカフェやファミレスに出向き、
思考を巡らせつつ文章を綴る。
人の話をBGMにすると何故か捗るというのは、
書き物を生業とする人間には超あるあるな話。

かく言う私も同じで、
今、このコラムを綴っているのは、
都内のとある「サイゼリヤ」である。

近くに学生が万単位で通う大学があるため、
いつも混んでいて、
入るのを断念していたのだが、
今日(日曜日)の14時頃は、
数席の空きがあったので入ってみた。

まずは腹ごしらえと、
ミラノ風ドリアとエスカルゴを頼み、
どんな人が食事を楽しんでいるのかと
周りを見渡す。

左隣では大学生と思われるカップルが、
右隣ではメキシコ系と思われる外国人女性が
ひとりで食事をしている。
100席はあろうかという店内はほぼ満席。
BGMというには許容できるデシベル値を
超えている気もした。

料理の到着を待つ間、
難しすぎると評判の間違い探しに
チャレンジしてみるも、
評判通りの難しさで
10個中7個しか見つけられず。
その最中に、
左隣のカップルに料理が届き、
今時、見ないなぁと懐かしさを感じるほどの
「あーん」をやり始めたから、
目線をそちらに向けないように努めて気疲れ。
さらに、プーケット旅行に行くに際して、
トランジットが面倒、みたいな
ちょっと興味をそそる話をし出したから
もう、情報過多で、
ミラノ風ドリアを半分食べたところで、
疲労困憊してしまった。

なんとか料理を食べきり、
パソコンを開いたまでは良かったのだが、
そのタイミングで
左隣のカップルが席を立ったので
テーブルを見てみると、
全ての料理が
ちょうど半分くらい残っていて、
今度は嫌悪の感情が沸いてきた。

全く集中できない。
この店、ツッコミどころが満載。
入ってくる情報が多すぎるのだ。

それでも、
せっかく来たのだからと
パソコンに目を落としたのだが、
カップルが座っていた席に、
アメリカ人だかオーストラリア人だか
もしかしたらイタリア人の男性が座り、
ひとりでものすごく美味いものを
食べているかのように
激しく頷きながら食事をし出したものだから
もう耐えられなくなり…

結局、この行は自宅で書いている。