弁が立つとはそういう意味ではない

2025/11/17

荒木建策(放送作家/脚本家)

弁当とは、
日本が生み出した素晴らしい食文化だ。
ここ10年ほどで
ニューヨークやパリでも弁当屋が
人気を博していると聞くし、
ラーメンくらい世界でメジャーになるのも
時間の問題なのかもしれない。

前に私はいまだかつて「給食」というものを
食べたことがない、という話を綴ったが、
裏を返せば幼稚園から小中高まで、
ずっと弁当を持参する生活だったということ。

故に、私は弁当に関しては、
もう完全にベテランの域なのである。

祖母(健在)が作ってくれた弁当、
母(元教師)が作ってくれた弁当、
そして、毎日周りで机をくっつけて
一緒に昼食を摂っていた
同級生たちの弁当を見てきたのだ。
その数、万はくだらない。

幼稚園では、
全園児が楕円のアルミの弁当を持参し、
それを朝、先生に渡して、
昼頃まで「弁当温め器」みたいなもので
加熱&保温されて温かい状態で提供されるという
謎システムを経験した。

小学校では、
祖母なのか母なのか父なのか祖父なのか、
誰が言い出したのか、
漁師が持っていくような保温の効く、
下から、みそ汁、ご飯、おかず、
という3階層に分かれた巨大弁当箱を
持たされる日々。
カレーの翌日はみそ汁の段がカレーで、
昼食が楽しみでならなかった。

中学では、
土曜の部活前に
アルミ箔におにぎりだけ5個包まれた
友達んちの手抜き弁当に憧れ、
同じようにしてもらったら
血糖値が上がり過ぎて気持ち悪くなる
事案を体験。

高校では、
1時限目の前に2コマの授業がある
うちの高校の基地外時間割に合わせ、
弁当+2個の菓子パンを持って
学校に行っていた記憶。

最近では、
ロケ弁、そして駅弁をも網羅し始めた私が
弁当に求める条件を最後に記そう。

一. 冷たくあれ
二. 冷たくても美味しいものを詰めろ
三. ロケ弁はオーベルジーヌ
四. 駅弁は西より東が吉
五. 弁当は作り手の愛の塊であることを忘れるな

以上、弁当知識人の私が、
雄弁に能弁に綴った回でした。
雄弁は銀、沈黙は金。
だったかも知れません。